・・・をもっと社会的な観点から批評し得るようになりました。今そろそろ書きはじめた長篇で、私は「伸子」の持たなかった客観的な眼で歴史の或る時期と幾つかの社会層の人間の心持、その相互的な関係を描き出したいと思っています。〔一九三七年五月〕・・・ 宮本百合子 「「伸子」について」
・・・ルジョア封建的教育によって文化水準をおくらされている未組織婦人大衆を吸収するために欠くべからざる条件としての、いきいきした、親密な階級的日常性、わかり易さ、内容の生活的な多様を、同時に最も正確な階級的観点によって現在資本主義日本に起りつつあ・・・ 宮本百合子 「婦人雑誌の問題」
・・・そういう観点からとりあげられて来るのだ。 だから、各国の階級闘争が国際的連帯を緊密にするにつれて、文化活動の国際性もこの頃ますます拡大されて来た。 文学活動上の種々の問題、例えば創作の唯物弁証法的方法という問題にしろ、プロレタリア文・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
・・・という論文は、徳永の近頃の勉強が明らかに反映されている点、および歴史小説をいかに書くかというひろい観点から「青年」を問題としている点など、興味あるものであった。「当面した現実の階級闘争の必要性を歴史小説において取上げることはブルジョア陣・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・主題を、きびしいプロレタリア的観点からそしゃくしぬいたという手ごわさがない。むしろ、文章に気をつかっているのが分る。すらすらと読める文章を書こうとして、土台をがっちり打ちこむことをおるすにし、その文章の上でさえ、大衆のかたまった力、熱、メリ・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ さてそのような観点から麦積山の写真をながめていて、まず痛切に感ずるところは、ここにある魏の時代の仏像がいかにも推古仏の源流らしい印象を与えること、そうしてそれが塑像であることと何らか密接な関連を持っているらしく見えることである。・・・ 和辻哲郎 「麦積山塑像の示唆するもの」
出典:青空文庫