・・・もしそうであれば、それだけかえって必要な解毒剤かもしれない。 管絃のプログラムが終ると、しばらくの休憩の後に舞楽が始まった。 一番目は「賀殿」というのであった。同じ衣装をつけた舞人が四人出て、同じような舞をまうのであるが、これもちょ・・・ 寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ 解毒剤 あらゆる面で、生活の正常な機能を破壊された七千万の日本人民が、今日当面している困難と辛苦とは、実に大きい。 複雑な重病にかかったとき私たちはどういう医者を求めるだろう。決して、おさすり町医は求めな・・・ 宮本百合子 「女の手帖」
・・・ 百貨店の娘さんたちの朝から夕方店を閉じるまでの忙しさ、遑のない客との応接、心を散漫に疲れさせるそれらの条件を健全でない事情と見て、反対の解毒剤として、所謂落着いた古来の仕舞は健全と思われているのであろう。実際に百貨店の娘さんたちの動き・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・而して、行動主義文学、能動精神の声は、単に、『文学界』の芸術至上的、抽象的風潮への解毒剤として一般に迎えられたばかりでなく、プロレタリア文学の公式主義との中間に立って知識階級の文学を確立しようと欲するインテリゲンツィアの心持をつよく魅した本・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・を描き、一九一四年にいたる時代を描こうとしている作者ロジェ・マルタン・デュ・ガールの人生態度の慎重さ、誠実さ、文学作品としての完成度のほんもの工合が、特に解毒剤のような清涼さで読者の感情にふれて来るというのは、その反面に何を語っているのであ・・・ 宮本百合子 「次が待たれるおくりもの」
出典:青空文庫