・・・科学の事実やその方則やその応用の事例を一般読者にわかりやすいように解説することを目的としたものである。そういうものの中でもファラデー、ヘルムホルツ、マッハ、ブラグなどのものはすぐれた例である。それがすぐれている所因は単に事がらを教えるのみで・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・ これとはまた全く別の事であるが、われわれが科学の研究に従事している際にある一つの現象と他の一つの現象との間に著しい形式的ないし本質的類似があると感じ、そうしてその類似を解説し、主張してみても、他の観点に立っている学者から見ると、一向に・・・ 寺田寅彦 「観点と距離」
・・・もし読者のうちでこの謎の意味を自分の腑に落ちるようにはっきり解説してくれる人があったら有難いと思うのである。 寺田寅彦 「喫煙四十年」
・・・それの草稿が遺族の手もとにそのままに保存されていたのを同氏没後満三十年の今日記念のためにという心持ちでそっくりそれを複製して、これに原文のテキストと並行した小泉一雄氏の邦文解説を加えさらに装幀の意匠を凝らしてきわめて異彩ある限定版として刊行・・・ 寺田寅彦 「小泉八雲秘稿画本「妖魔詩話」」
・・・この日M君N君の解説を聞いたことだけから考えても、すべての芸道に共通な要領がゴルフの術にも要求されていることが分る。一番大事なものはやはり心の自由風流であるらしい。 人間が球を飛ばせたり転がしたりする遊戯の種類が一体どのくらいあるか数え・・・ 寺田寅彦 「ゴルフ随行記」
・・・そうして、どうするのが善いとか悪いとか、そんな限定的なモラールや批判や解説を付加して説明するにはあまりに広大無辺な意味をもったものである。それをいいかげんなほんの一面的なやぶにらみの注解をつけて片付けてしまうのではせっかくのおとぎ話も全く台・・・ 寺田寅彦 「さるかに合戦と桃太郎」
・・・ たとえば人間が始まって以来今日までかつて断えた事のないあらゆる闘争の歴史に関するいろいろの学者の解説は、一つも私のふに落ちないように思われた。……私には牛肉を食っていながら生体解剖に反対している人たちの心持ちがわからなかった。……人間・・・ 寺田寅彦 「芝刈り」
・・・どうでも今日は行かんすかの一句と、歌麿が『青楼年中行事』の一画面とを対照するものは、容易にわたくしの解説に左袒するであろう。 わたくしはまた更に為永春水の小説『辰巳園』に、丹次郎が久しく別れていたその情婦仇吉を深川のかくれ家にたずね、旧・・・ 永井荷風 「雪の日」
・・・理智はすべてを常識化し、神話に通俗の解説をする。しかも宇宙の隠れた意味は、常に通俗以上である。だからすべての哲学者は、彼らの窮理の最後に来て、いつも詩人の前に兜を脱いでる。詩人の直覚する超常識の宇宙だけが、真のメタフィジックの実在なのだ。・・・ 萩原朔太郎 「猫町」
・・・ ミニェチュアの解説はごく簡単であったから、わたしはただその絵の印象やルスタムという伝説の英雄の名を憶えただけであった。 暫くして、ペルシア文学史をよむ折があった。そしたら、その中にまたルスタムが出て来た。息子のスーラーブの名も。ル・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
出典:青空文庫