・・・この事実が肯定されるなら、私がクロポトキンやレーニンやについて言ったことは、奇矯に過ぎた言い分を除去して考えるならば、当然また肯定さるべきものであらねばならない。これらの偉大な学者や実際運動家は、その稀有な想像力と統合力とをもって、資本主義・・・ 有島武郎 「片信」
・・・と、僕は軽く答えたが、あまりに人を見くびった言い分を不快に感じた。 しかし、割合いにすれていない主人のことであるし、またその無愛嬌なしがみッ面は持ち前のことであるから、思ったままを言ったのだろうと推察してやれば、僕も多少正直な心になった・・・ 岩野泡鳴 「耽溺」
・・・家に金の残らぬのは前々の借金で毎日の売上げが喰込んで行くためだとの種吉の言い分はもっともだったが、しかし、十二歳の蝶子には、父親の算盤には炭代や醤油代がはいっていないと知れた。 天婦羅だけでは立ち行かぬから、近所に葬式があるたびに、駕籠・・・ 織田作之助 「夫婦善哉」
・・・ 若いものの言い分も聞いてくれ! そうして、考えてくれ! 私が、こんな如是我聞などという拙文をしたためるのは、気が狂っているからでもなく、思いあがっているからでもなく、人におだてられたからでもなく、況んや人気とりなどではないのである。本・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・これは少し変った言い分のようであるが、しかし一般に云って、同じ団体がそう永く無事に続くということ自身が沈滞と硬化とを意味する場合が多い。これは政党でも学術団体でも、芸術団体でも同様である。どこでもやはり時々「野獣の群」が出なければ新しい生命・・・ 寺田寅彦 「二科展院展急行瞥見記」
・・・海事局だって、俺の言い分なんか聞かねえ事あ、手前や船長が御託を並べるまでも無えこっちで知ってらあ。愈々どん詰りまで行けゃあ、俺だって虫けらた違うんだからな。そうなりゃ裸と裸だ。五分と五分だ。松葉杖ついたって、ぶっ衝って見せるからな」 松・・・ 葉山嘉樹 「浚渫船」
・・・ そのために母親は、自分の都合でばかり子供を叱らず、忙しくても辛抱して、とっくりと子供の言い分をきいてやり、親の思いちがいであったならば、さっぱりと、母さんが間違えていてわるかったね、ごめんよ、と云ってやることが大切です。こういう親・・・ 宮本百合子 「新しい躾」
出典:青空文庫