・・・『改造』の附録の方の翻訳署名責任者として荒畑寒村氏が、最後に「訳者の言葉」を附し、この四六判二百九十余頁に亙るトロツキーの「絢爛たる文彩、迫撃砲の如き論調、山積せる材料、苛辣なる皮肉」が結局「どんなに善意に解釈しても、ソヴィエットの社会主義・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ この小説の訳者は、少くとも原文に忠実であろうとするあらゆる努力を惜んでいない。意味に忠実であるばかりでなく、シチェードリンのむずかしい文章の脈うちの特徴や、作品人物の性格的な物言いの癖までも日本文のなかに捕えようと試みていて、そのため・・・ 宮本百合子 「翻訳の価値」
・・・兇悪な戦争が、訳者山内義雄氏と出版社白水社の仕事を阻んだ。六年を経て、一九四六年十一月に第八巻「一九一四年夏」第一部が出版されて、更にきょうまで三年の月日が沈黙にすごされている。「チボー家の人々」の日本語版がめぐりあったこれらの障害は、一つ・・・ 宮本百合子 「脈々として」
・・・指せられた誤は著者訳者の不学無識から生じたものとして罪せられる。縦い正誤してから後に心附いていても罪せられることは同じである。翻訳の上では、世間が期待と興味とを以て歓迎する誤訳問題がここに成り立つ。最初文芸委員会がファウストを訳することを私・・・ 森鴎外 「訳本ファウストについて」
出典:青空文庫