・・・何となれば只今前論者の云われたようなトラピスト風の人間というものは今日全人類の一万分一もあるもんじゃない。やっぱりあたり前の人間には肉類は食料として滋養も多く美味である。ビジテリアン諸氏が折角菜食を実行し又宣伝するのを見た処で感服はしても容・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・ 婦人の性の本来は生殖に重点をおかれているのであるから、社会労働は、常に男の補助の範囲であるのが自然であり、従って賃銀も、いわゆる世帯主としての負担のにない手である男よりやすいのが当然であるとする論者がある。こういう立場の論者は、男も女・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・ 私は、その論者と反対です。あなたの作品の中には、あなたの作家的全幅が何らかの形で常に露出している、そう信じます。例えば、「小鬼の歌」で、あなたは、あなたをして書かしめている境遇のプラスな面と、あなたをして書くことを得ざらしめているマイナス・・・ 宮本百合子 「含蓄ある歳月」
・・・の擡頭につれて、その能動精神への翹望の必然と同時に、真にその精神を能動的たらしめるためには、今日急速に生じている中小市民層の社会的立場の分化、知識人の階級的分化の実情にふれて理解しなければならぬとする論者の現れたのは、極めて当然のことであっ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・民衆の日常感情を映したものでなければならないといわれたが、民衆の理解力といい、日常感情といいそれらはいずれも論者たちの主観的な解釈に立った内容でとりあげられ、その意味では民衆の文学といわれつつ必ずしも文学の現実として民衆を対象としているとは・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・この種の論者は、浪花節を何よりすきと思っている民衆の感情にぴったりするようなものを作家は創造して大衆化しなければならないと主張した。大衆にわかるように書かなければならないと主張した。谷川徹三氏はその「文化均衡論」で、現代は民衆の文化水準と知・・・ 宮本百合子 「全体主義への吟味」
・・・しかし、私はそういう論者に、読者とともに次のことについて誠心からの答えを求めたいと思う。浮世の辛酸をなめ、民衆としての苦労をした人々を、所謂貧すれば鈍する的事情から立たしめて、その辛酸と労苦との社会的意義を自覚させたのは何の力であったろうか・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
出典:青空文庫