・・・特に、日本の婦人雑誌では、女の幸福についての論議や異性の間の友情の可能についての文章が多い。この事実には、近代日本というものの深い歴史の影が現れていると思わざるを得ない。 もし日本の習俗の中で男性というものが女性にとって、良人候補者、あ・・・ 宮本百合子 「異性の友情」
・・・頭をもたげて生活するということであり、生活はおのずからその歌と理性の論議をもっている。そして、それを表現する芸術こそ、地球上の他のあらゆる生きものの動物性から人間を区別する光栄ある能力であり、その成果によって私たちははじめて生きてゆく自分た・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・テーマは作者の主観において極めて生々しいものであり、当時の日本の文学の諸相との関係では、文学論議の中心課題をなした問題であるという客観的な重要さも持っていた。芥川龍之介は、それらのテーマを何故、殊更絵巻風の色調に「地獄変」として書かなければ・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・詩のジャンルとして諷刺詩というものがあり得るとか、あり得ないとかいう論議より先に、私共は実際生活の場面で屡々それに対して憤りの感情を激発され、しかもそれなりの言葉では云い現わせないという窮屈な事情に出くわしつづけているのです。一九三六年版の・・・ 宮本百合子 「歌集『集団行進』に寄せて」
・・・ この間うち、散文精神というようなことが考え直され、論議された。この散文精神という表現は武田さんが三四年前云い出されたことで、云い出された心持には、現実に肉迫して行ってそこにあるものをそれなり描き出すことで、現代のあるがままの姿その・・・ 宮本百合子 「現実と文学」
・・・民主党のトルーマンにも共和党のデューイにも進歩党の政策がないということが共通した政策である、と批判されていたとき、ウォーレスの進歩党はアメリカの人々に、論議に価する綱領を示した。 ウォーレスの選挙演説に加えられた妨害はひどくて、トルーマ・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・幸福というものが、あっちからこっちからつつかれ、吟味され、論議されていることはまざまざとうけとれるが、さて幸福の愛らしく全い姿はどこにも描き出されていないことが多い。語る人々もいつの間にやら、幸福の二字が身のまわりにもち来っている観念の妖術・・・ 宮本百合子 「幸福の感覚」
・・・よかれ、あしかれ、日本の民主主義文学の運動にふれたり、それをまともに論議したりすることは、語り手自身のファッション・ショウめいているそのような場面ではもう流行はずれの気風がつくられた。民主的評論家は沈黙し、ジャーナリズムが釣り出した新人でな・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・当時、文学運動に関する討論の一部として児童文学のことが論議され、それがある人のその文学の到達点にまでいたっていないことについて批判が行われていた。少年らのグループが作家の団体へ、あなた方の文学上の才能を、未来の担い手であるわれわれのためにも・・・ 宮本百合子 「子供のために書く母たち」
吉をどのような人間に仕立てるかということについて、吉の家では晩餐後毎夜のように論議せられた。またその話が始った。吉は牛にやる雑炊を煮きながら、ひとり柴の切れ目からぶくぶく出る泡を面白そうに眺めていた。「やはり吉を大阪へ・・・ 横光利一 「笑われた子」
出典:青空文庫