・・・ 一九五〇年の私達の課題は日本が全面的な講和によって、次の戦争に利用する事の出来る従順な八千五百万の住民と云うノロワシイ条件を克服しなければなりません。 私達は優しい日本の心、素直な女のものわかりよさと云う、オアイソに乗って、自分達・・・ 宮本百合子 「今年こそは」
・・・ 講和の問題がおこって来ているにつれ、役人のある種の人たちは、さかんに、日本はまけた国なのだから講和問題について自分から発言する権利はないのだという考えかたを、みんなの頭にしみこまそうとしている。したがって強い国が日本に対して要求するど・・・ 宮本百合子 「しようがない、だろうか?」
・・・人質としてとられ、又媾和的なおくりものとして結婚させられる。戦国時代の婦人達の愛情とか人間性というものがどんなにふみにじられたかということは細川忠興の妻ガラシアの悲壮な生涯の終りを見てもわかる。明智光秀の三女であったおたまの方はキリスト教を・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・ 一九五〇年における日本のまじめな人民の関心事は、全面講和によって世界平和に協力することです。パール・バック女史は、日本人は食べるものと住むところさえあれば、あとはどうでもよいのだという意味の意見を発表されているそうですが、人民の精神は・・・ 宮本百合子 「宋慶齢への手紙」
・・・ 一九一八年十月二十三日〔東京市本郷区駒込林町二一 中條葭江宛 シカゴより〕 此頃のアメリカの新聞は、講和問題で賑って居ります。独逸が潜航艇を皆引上げそうな事を云ったり、平和を要求したりするような顔をするが、実は、羊の皮を着・・・ 宮本百合子 「日記・書簡」
・・・と大見出しがつくような話をする一国の首相があるだろうか。講和後も、外国軍隊にとどまっていて欲しいと云った吉田だけのことはある。 首相にとって、日本はとうの昔に人民の日本なんかではなくなっているのだ。日本を「外国人の安住地」にするために、・・・ 宮本百合子 「日本は誰のものか」
・・・そうでないことは、当時行かれなかった日本代表たちのメッセージを見てもわかる。講和についてのおとといの首相の演説は、何よりさきに、わたしたちに次のことを警戒させる。来るべき講和がどういう形をもってはじまるにせよ、その条件として日本が「次の戦争・・・ 宮本百合子 「人間イヴの誕生」
・・・作品としては肉体派の文学を書いている作家たちも、平和と全面講和の要求にはその名をつらねている。 文学の分野に出場して来た婦人の層は一九四六年以来、非常に立体的に広範囲になってきた。平林たい子の「盲中国兵」「終戦日誌」「一人行く」「こうい・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・ 日本のわたしたちは、全面講和によって世界の全面に対して平和日本の人民であろうとしている誠意を表現し、それを貫徹してゆかなければならない。戦時中日本の政府は、侵略主義の本質を、見ための珍しい美しさや異国情緒でカムフラージュしようとして日・・・ 宮本百合子 「婦人デーとひな祭」
・・・わたしたちが日本のこんにちの現実の中に生き、そして死ななければならない八千五百万の日本人民の一人としての自分の人生を思うとき、たとえば全面講和の要求にしろ、まったくわたしたちの直接な世界平和への良心の声であり、軍事的奴隷としてでなく生きるこ・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
出典:青空文庫