・・・もしも彼がかりにわが日本政府の官吏であったと仮定したら、はたしてどうであったかを考えてみることを、賢明なる本誌読者の銷閑パズルの題材としてここに提出したいと思う次第である。 これに関連したことで自分が近年で実に胸のすくほど愉快に思ったこ・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・それというのも大概は科学者自身に筆を執らせてそれを掲載するという賢明な方法をとっているので、そんな滑稽な記事はありにくいわけである。しかし今でも科学者でない新聞記者の手になったらしい記事の中には時々おもしろい実例が見つかるようである。たとえ・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
・・・スパークのようなトランジェントな現象である。賢明なる読者の寛容を祈る。 寺田寅彦 「スパーク」
・・・コンミューン亡命者の婦人達がしばしば彼女を思い出すであろうと同様に、われわれ同志はなお更しばしば彼女の大胆、かつ賢明な忠告を惜しむであろう。」「他人を幸福にすることを自分の何よりの幸福と考えた婦人があったとすれば、彼女こそ正しくその婦人であ・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・ あなたは、リアリストとしての賢明さから自身の特別条件のよい境遇の価値というものを十分理解されていたと思われます。嘗て「青鞜社」の活動の旺であった時代、伊藤野枝があなたのとなりに住んでいた時代、近くは急速な思想的動揺、歴史の転廻の時代、・・・ 宮本百合子 「含蓄ある歳月」
・・・ この話は、今日私たちが聞きましても面白いもので、これは十三世紀頃、いまから八百年も前に出来た話であります。 賢明な男の人は、女が一番求めているのは、独立であって、しかも女自身では、表現することが出来ない、自分がいま求めているものは・・・ 宮本百合子 「幸福について」
・・・其で、所謂賢明な者は、相当に一般を首肯させる理論を前提として、最も安全な現状維持を主張致します。此の傾向が、“Against the Convention of Unconvention”を称する一群の動機に大きな関係を持って居る事は争われ・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・まずこの食糧の問題、労働賃金問題、インフレ問題は、一朝一夕に、てっとりばやい効果が示せないから、出来ることから早くやって、誰の目にも悪いとしか見えないところに掣肘を加えておくのは、賢明でしょう。闇の大親分が捕まった、料理店がしめられた、それ・・・ 宮本百合子 「社会と人間の成長」
・・・愚劣なもの、醜悪卑劣なもの、同時に賢明、純良、壮大であり横溢的で、すべての現象が、現世界の全保有量の過半をしめるアメリカ的社会の上に満開している。その失業やストライキや住宅難もともに。ソヴェト作家シーモノフは、このアメリカの巨大な有機体のな・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・それに対してはしかるべき心得がなくてはならない。賢明な大将は、事のよしあしは自分で判断する。したがって「善きことをほめるは道理と思ひ、悪しきことをほめるは、我への馳走、時の挨拶と心得る」。しかるに、人によると、悪しきことをもほめる者を軽薄者・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫