・・・明烏と累身売りの段を語った。私は聞いていて、膝がしびれてかなりの苦痛を味い、かぜをひいたような気持になったが、病身の兄は、一向に平気で、さらに所望し、後正夢と蘭蝶を語ってもらい、それがすんでから、皆は応接間のほうに席を移し、その時に兄は、・・・ 太宰治 「庭」
・・・婦人民主新聞が経営難から身売りしなければ立ゆかないという事情におかれた。それまで執筆者としての関係にだけおかれていたクラブの人々は、この危機にはっきり自己批判した。もう経営のことは男の人たちにまかせておいてもいいなどという料簡ではいられない・・・ 宮本百合子 「その人の四年間」
・・・ 東北の飢饉地方から、売られて汽車にのせられ、東京へ出て来る娘たちの年頃は、皆この小説に書かれている十六のとし子と同じ年かその下が多い。身売り防止会は、それらの田舎出の娘たちを一通り仕こんで方々の家へ女中として世話しているのであるが、そ・・・ 宮本百合子 「村からの娘」
出典:青空文庫