・・・ と破れた人間離のした嗄声が咽喉を衝いて迸出たが、応ずる者なし。大きな声が夜の空を劈いて四方へ響渡ったのみで、四下はまた闃となって了った。ただ相変らず蟋蟀が鳴しきって真円な月が悲しげに人を照すのみ。 若し其処のが負傷者なら、この叫声・・・ 著:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ 訳:二葉亭四迷 「四日間」
・・・それが皺曲や断層やまた地下熔岩の迸出によって生じた脈状あるいは塊状の夾雑物によって複雑な構造物を形成している。その構造の如何なる部分に如何なる移動が起ったかが第一義的の問題である。従ってその地質的変動によって生じた地震の波が如何なる波動であ・・・ 寺田寅彦 「地震雑感」
・・・近松は、あれほど沢山の浄瑠璃を書かざるを得なかった程、義理人情の枠を突破する現実の人間性の迸出を当時の社会にあって感覚したのである。 先頃来朝した戯曲家エルマー・ライスは、今日の世界の到るところに矛盾を認めた。せめて、それ迄の平静さ、へ・・・ 宮本百合子 「「迷いの末は」」
出典:青空文庫