・・・もしそういう認定が許されるならば、美術家がそういう刺戟を決して受けないという自分の経験を基礎として、公衆もまたすべてこれを芸術的に鑑賞し得ると認定する場合に、それを斥ける権利がない。公衆の内にただ一人でも肉感的刺戟のみを受ける人があれば、そ・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
・・・それが地獄の劫火に焚かるべき罪であろうとも、彼はその艶美な肌の魅力を斥けることができない。そこに新しい深い世界が展開せられている。魂を悪魔に売るともこの世界に住むことは望ましい。 それが新時代の大勢であった。地下の偶像は皆よみがえって、・・・ 和辻哲郎 「『偶像再興』序言」
・・・大いなる愛は我を斥ける。そうしてすべて偉大なるものは大いなる愛から生まれる。偉人は凹んでいるように見える時に完全な征服を行っている。彼は愛を以て勝つのである。真に人格を以て克つのである。我を以て争う時にはどんなに弱いものでも刃向って来る。嘲・・・ 和辻哲郎 「自己の肯定と否定と」
出典:青空文庫