・・・科学者がその方則を述べる字句の巧拙や運算の器用不器用は必ずしもその方則の価値と比例しないのと一般であろう。 むしろあまりに悪達者な漫画家の技巧がその内容と反比例を示す場合も少なくないように見える。それは技巧が跳躍して科学的真の圏外に逸出・・・ 寺田寅彦 「漫画と科学」
・・・ すると三郎は、どこから出したか小さな消し炭で雑記帳の上へがりがりと大きく運算していたのです。 次の朝、空はよく晴れて谷川はさらさら鳴りました。一郎は途中で嘉助と佐太郎と悦治をさそっていっしょに三郎のうちのほうへ行きました。・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
・・・そこでキッコはその鉛筆を出して先生の黒板に書いた問題をごそごその藁紙の運算帳に書き取りました。48×62= 「みなさん一けた目のからさきにかけて。」と先生が云いました。「一けた目からだ。」とキッコが思ったときでした。不思議なことは鉛・・・ 宮沢賢治 「みじかい木ぺん」
出典:青空文庫