・・・これは一見誇大な言明のようであるが実は必ずしも過言でないことはこの言葉の意味を深く玩味される読者にはおのずから明らかであろうと思われる。 こういう意味で自分は、俳句のほろびない限り日本はほろびないと思うものである。 付言・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
・・・―― 要するに、今月の女優劇は決して成功の部類に属すべきものではないと云っても過言では無かろう。 見物の心に迫って来る俳優の技術は、只外部から磨をかけられた腕の冴えばかりではない。昔のように「型」できめて行くだけではなく、真個に我々・・・ 宮本百合子 「印象」
・・・このたびの決議のレーニン的基礎づけ、思想的基礎づけの半ばは、同志小林が全力を傾けて実践した日和見主義との仮借なき闘争の成果によって行われたと云っても過言ではないであろう。 同志小林の不滅の精神は、今日われわれが正しい決議を発表し得るに至・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・ 大体、過去においてオノレ・ド・バルザックについて書いたほどの人で、彼の貴族好みに現れた趣味の低俗さを指摘しなかった伝記者、評論家は一人もなかったと云っても過言ではないであろうと考える。 頻繁で噪々しい笑いの持ち主、その頃流行の・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・さて今の文壇になってからは、宙外の如き抱月の如き鏡花の如き、予はただその作のある段に多少の才思があるのを認めたばかりで、過言ながらほとんど一の完璧をも見ない。新文学士の作に至っては、またまた過言ながら一の局部の妙をだに認めたことが無い。予は・・・ 森鴎外 「鴎外漁史とは誰ぞ」
出典:青空文庫