・・・安倍源基は、警視庁の特高部長でした。それから人民抑圧の手柄によって、警視総監となり、内務大臣となり、さいごに企画院にゆきました。彼の出世の一段階ごとに治安維持法の血がこくしたたっています。小林多喜二を拷問で殺したのも、安倍源基とその部下の仕・・・ 宮本百合子 「ファシズムは生きている」
・・・ 一九一八年の党員で、フルンゼと一緒に赤色戦線で働き、クバン駐在赤軍政治部長をやった若いドミトリ・アンドレーウィッチ・フールマノフは、ボルシェビキ作家の誇、「チャパーエフ」、「反乱」などをわれわれに与えた。グラトコフの「セメント」、フセ・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・元大審院部長・元司法次官三宅正太郎という人が、中央労働委員会の会長に就任した。これは、世界にも類のない民主化の方法である。 同時に主要食糧供出に対する強権発動のことが云われている。申告すべき退蔵物資の十六種目一覧表も載った。ここに又一つ・・・ 宮本百合子 「モラトリアム質疑」
・・・奔放で傍若無人な美代子が婦人部長としてはがっちり働いてゆきつつ重吉に対する佳子の傾倒にちょいと意地わるしたりする動きがよくとらえられている。重吉にうかれる佳子が雛菊寮の中の共産党毛ぎらいのふん囲気におのずから一致しかねているところも無理がな・・・ 宮本百合子 「『労働戦線』小説選後評」
・・・そして三角州の突端、騎馬のウェリントン公爵像は背後に英蘭銀行を、右手に株式取引所の厖大な建物を護り、巡査部長のように雑踏を上から睥睨している。 山の手のここは終点である。英国のあらゆる国家的、個人的美徳、老獪、権謀がこの煤けた八本の大柱・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫