・・・昇降機がおりて来る竪坑を中心にして、地下百尺ごとに、横坑を穿ち、四百尺から五百尺、六百尺、七百尺とだん/\下へ下へ鉱脈を掘りつくし、現在、八百尺の地底で作業をつゞけている。坑外へ出るだけでも、八百尺をケージで昇り、――それは三越の六倍半だ―・・・ 黒島伝治 「土鼠と落盤」
・・・比喩で申すと、私は多年の間懊悩した結果ようやく自分の鶴嘴をがちりと鉱脈に掘り当てたような気がしたのです。なお繰り返していうと、今まで霧の中に閉じ込まれたものが、ある角度の方向で、明らかに自分の進んで行くべき道を教えられた事になるのです。・・・ 夏目漱石 「私の個人主義」
・・・「ここのモリブデンの鉱脈は当分手をつけないことになったためなそうです。」「そうだないな。やっぱりあいづは風の又三郎だったな。」嘉助が高く叫びました。 宿直室のほうで何かごとごと鳴る音がしました。先生は赤いうちわをもって急いでそっ・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
出典:青空文庫