・・・今は子供の着るものですら、黄とか紅とか言わないで、多く間色を用いるように成った。それだけ進歩して来たんだろうね」「しかし、相川君、内部も同じように進んでいるんだろうか」「無論さ」「そうかなあ――」「原君、原君、まだまだ吾儕の・・・ 島崎藤村 「並木」
・・・黒と白だけで全部を表現する版画家の人生に対する感情にさまざまな点から新しい興味を喚起されたし、文化の程度の低い民族あるいは社会層の者ほど原色配合を好み、高級となり洗練された人間ほど微妙な間色の配合、陰翳を味わう能力を増すといわれているありき・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
・・・家並の揃った、展望のきく間色の明るい街を、電車は額に照明鏡を立てたドクトルみたいなかっこうで走っている。 年経た、幹の太い楡の木がある。その濃い枝の下に、新聞雑誌の売店、赤い果物汁飲料のガラス瓶。 古いくり形飾を窓枠につけたロシア風・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
出典:青空文庫