・・・この事実が肯定されるなら、私がクロポトキンやレーニンやについて言ったことは、奇矯に過ぎた言い分を除去して考えるならば、当然また肯定さるべきものであらねばならない。これらの偉大な学者や実際運動家は、その稀有な想像力と統合力とをもって、資本主義・・・ 有島武郎 「片信」
・・・長兄が来るまでは、私が兄の傍に寝て二晩、のどにからまる痰を指で除去してあげました。長兄が来て、すぐに看護婦を雇い、お友だちもだんだん集り、私も心強くなりましたが、長兄が見えるまでの二晩は、いま思っても地獄のような気がいたします。暗い電気の下・・・ 太宰治 「兄たち」
・・・私の歩いている道に、少しでも、うるさい毛虫が這い寄ったら、私はそれを杖でちょいと除去するのが当然の事だ。私は若くて美しい。いや美しくはないけれど、でも、ひとりで生き抜こうとしている若い女性は、あんな下らない芸術家に恋々とぶら下り、私に半狂乱・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・「悪習は除去すべきである。本郷区千駄木町五十、吉田潔。」 月日。「言わなければならぬと思いながら言えない。夏休みになったら手紙をかこうと決心した。手紙をかき度い。かかなければならぬと、思いながらなぜかけないのかということを考・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・浮塵子に似た緑色の小さい虫が、どの薔薇にも、うようよついていたのを、一匹残さず除去してやった。枯れるな、枯れるな、根を、おろせ。胸をわくわくさせて念じた。薔薇は、どうやら枯れずに育った。 私は、朝、昼、晩、みれんがましく、縁側に立って垣・・・ 太宰治 「善蔵を思う」
・・・の客観とは次第に縁の遠いものになり、言わば科学者という特殊な人間の主観になって来るような傾向がある。近代理論物理学の傾向がプランクなどの言うごとく次第に「人間本位の要素」の除去にあるとすればその結果は一面において大いに客観的であると同時にま・・・ 寺田寅彦 「科学者と芸術家」
・・・その際もしも、その研究員が、更に進んでその欠点を除去し、その商品を完成するように研究の歩を進めるならば結構であるが、そうでなくて、その欠点を委細構わず天下に発表して、その結果その会社に多大な損失をかけ、事によるとその会社の存在を危うくするよ・・・ 寺田寅彦 「学問の自由」
・・・これもBを除去すればアソ型となるのである。またこれにつづいて考えることは Rausu, Rausi, Rasyowa のアイヌ系のものから始めのRを除き Lesson, Lassen からLを取るとアソ型に接近する。これも興味がある。マレイ・・・ 寺田寅彦 「火山の名について」
・・・人間の言葉の音波列を分析して、その組成分の中からその基音ならびに低いほうの倍音を除去して、その代わりに、もとよりはずっと振動数の大きい任意の音をいろいろと置き換えてみる。そういう人工的な音を響かせてそうしてそれを聞いてみて、それがもし本来の・・・ 寺田寅彦 「疑問と空想」
・・・ ジャーナリズムのあらゆる長所と便益とを保存してしかもその短所と弊害を除去する方法として考えられる一つの可能性は、少なくも主要な新聞を私人経営になる営利的団体の手から離して、国民全体を代表する公共機関の手に移すということである。それが急・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
出典:青空文庫