・・・ずっと年上であった相手のひとが、もう生活にくたびれかけていて、結婚生活ではひたすら安穏に、平和に順調な年から年へ日々がくりかえされることを望む心持であることがどうしても納得ゆかなかった。結婚生活こそ出発と思い、そのためにこそ貧窮もその身で知・・・ 宮本百合子 「青春」
・・・なぜなら、健康人の社会生活が安定であって、はじめて、病人の生活も保証される。順調な家庭生活の社会的基盤さえも失われている社会で、どうして不幸が根絶されるだろう。 民主的進展の速いヨーロッパ諸国で、この大戦後、婦人の政治的・社会的発言が強・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・ヴィンダー 愈事は順調に運ぶ。彼方此方の隅々から赤い焔がふき出したぞ。ほら、壊れた、脆い、木造りの梁に火の粉がとびつく。ぱっと拡がる。ミーダ 俺の呪いで植えつけられた慾の皮も火の熱気には叶わないか。算を乱して駆け出したぞ。ヴィン・・・ 宮本百合子 「対話」
・・・ 確かに順調ではなかった体の工合も、すっかりよくなって、毎晩恐ろしい夢に魘されることもなく、青かった顔にもいい色に血が潮して来た。 そして、自分でもびっくりするほど力の増した彼女は、健康状態が非常にいいとき、誰でも感じる通り、あのピ・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・民主主義文学が順調な発展を遂げてゆくこと、そのために私たちは骨をおしまず勇気をもって働くこと、それ以外に私たちの嫌いな権力的狂暴を封殺するものはありません。そのために必要な骨格は、民主主義文学についてのしっかりした過去と未来を見渡す能力のあ・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・ 数年は、又順調に過ぎました。 ところが長男のハフが十六七歳になると、続いて、悲しむべき事件が起り始めました。 ハフは、三度も落第して、父親の卒業した名誉ある学校を退学させられました。 ハリは、その時、「彼は頭はあるんだ。勿・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
出典:青空文庫