・・・シロオテは降りしきる雪の中で、悦びに堪えぬ貌をして、私が六年さきにヤアパンニアに使するよう本師より言いつけられ、承って万里の風浪をしのぎ来て、ついに国都へついた、しかるに、きょうしも本国にあっては新年の初めの日として、人、皆、相賀するのであ・・・ 太宰治 「地球図」
・・・自分の生活や心の内の風浪とかかわりのないルスタムの物語ならかえって書けそうに思えて来た。その気持はだんだんはっきりして来て、やがて、どうしても勇気を出してこの物語は書き終せなければならないと決心するようになった。手に入るだけの材料からノート・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・ この十年の間に、日本の文学は実に激しい風浪にさらされた。社会の屋台骨ごと揉まれている。著者が云っているとおり、「芸術一般という概念ぐらい私たちをつよく支配しているものはない」にかかわらず、急激な濤にうたれ、洗われ、文学の問題としてそも・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
出典:青空文庫