・・・ 魚貝のみならずいろいろな海草が国民日常の食膳をにぎわす、これらは西洋人の夢想もしないようないろいろのビタミンを含有しているらしい。また海胆や塩辛類の含有する回生の薬物についても科学はまだ何事をも知らないであろう。肝油その他の臓器製薬の・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・われらの食膳の一部を食っている、わが家族の一員であるはずのこの猫が、蜥蜴などを食うのは他の家族の食膳全体を冒涜するような気がするというのかもしれない。それほどにまでこの四足獣はわれわれの頭の中で人格化しているのだと思われる。 私は夜ふけ・・・ 寺田寅彦 「ねずみと猫」
・・・新らしい波はとにかく、今しがたようやくの思で脱却した旧い波の特質やら真相やらも弁えるひまのないうちにもう棄てなければならなくなってしまった。食膳に向って皿の数を味い尽すどころか元来どんな御馳走が出たかハッキリと眼に映じない前にもう膳を引いて・・・ 夏目漱石 「現代日本の開化」
・・・たとえ、イワシにしろ、今日、現実に、私たちの食膳へ配給されるようになった食糧の人民管理の方法は、共産党が生活問題解決の一歩として、既に実行で示している一つの例です。 共産党という名がきらいだわ、という婦人もどっさりあります。ほかの意見に・・・ 宮本百合子 「幸福のために」
出典:青空文庫