・・・こんな不自由はいよいよ馬鹿らしいと、農民は、益々播種面をちぢめ、耕地に草は伸び放題。ソヴェト生産の鋏は、順当な交互作用を失って開きっぱなしという危機に立ち到ったのであった。 一九二一年の果敢な新経済政策は、この生産関係の調整のために敢行・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ ――じゃ何かい、フェージャは……馬鹿らしい! お前達んところにはこうやってちゃんと独立した室があって、職業があって、しかも工場にあんないいヤースリがあるのに――。安心しといで。俺が云ってやるから……フェージャは間違ってる! だがね、・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・ 私は、程なくひどく可笑しい、然し、蚊の止った位馬鹿らしいような悲しさも混った心持で食堂を出た。〔一九二七年五月〕 宮本百合子 「三鞭酒」
・・・ 段々監督が箍をゆるめ、馬鹿らしいちゃりを入れ出したので、終りまで見る気がなくなったが、私はそこまで可なり愉快であった。けれども、前後に犇とつめかけている他の見物は、そういう可笑しみは全然感じないらしかった。元になっている蜂雀も知らない・・・ 宮本百合子 「茶色っぽい町」
・・・ おばあさんは、何だか滑稽なような、お礼を云うのも馬鹿らしいような気持になってしまった。 そして、臆している彼の前にこの上ない優越感を抱きながら、お礼を云うのか命令しているのか、さほどの区別をつけられないような口調で息子の救われた感・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・日記の中で、そういう女の人達に混って食うに食えないような自分、着物さえも借着である、そして、お追従を云いながらあの人たちの中に入っていなければならないのか、馬鹿らしいことだ、口惜しいことだと憤慨しています。自分の働いて生きて行く女としての立・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
・・・わたしたちの人民的世論というものがそのように表現されて自然であるということが分っていれば、小説家にならないからといって、階級人としての現実観察とその評価、批判を通信として書くのがおかしいとか、馬鹿らしいとかいうのが妙だということははっきりし・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
・・・そこで馬鹿らしいお話ですが、何度となく床から起きて、鏡の前へ自分の顔を見にいったのですね。わたくしも自分がかなり風采の好い男だとは思っていました。しかしまあ世間普通の好男子ですね。世間でおめかしをした Adonis なんどと云う性で、娘子の・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「最終の午後」
出典:青空文庫