・・・元来大学の文科出の連中にも時期によってだいぶ変わっている。高山が出た時代からぐっと風潮が変わってきた。上田敏君もこの期に属している。この期にはなかなかやり手がたくさんいる。僕らはそのまえのいわゆる沈滞時代に属するのだ。 学校を出てから、・・・ 夏目漱石 「僕の昔」
・・・ 当時の哲学科の学生には、私共の上のクラスには、両松本や米山保三郎などいう秀才がおり、二年後のクラスには桑木巌翼君をはじめ姉崎、高山などいわゆる二十九年の天才組がいた。有名な夏目漱石君は一年上の英文学にいたが、フローレンツの時間で一緒に・・・ 西田幾多郎 「明治二十四、五年頃の東京文科大学選科」
・・・その敬神尊王の主義を現したる歌の中に高山彦九郎正之大御門そのかたむきて橋上に頂根突けむ真心たふとをりにふれてよみつづけける吹風の目にこそ見えぬ神々は此天地にかむづまります独楽・・・ 正岡子規 「曙覧の歌」
・・・水はごくいい湧水にかぎる、それも新鮮な処にかぎる、すこし置いたんじゃもうバクテリアが入るからね、空気は高山や森のだけ吸い給え、町のはだめだ。さあ諸君みんなどこかしんとした山の中へ行っていい空気といい水と岩塩でもたべながらこのビジテリアン大祭・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・飛騨国では高山に二日、美濃国では金山に一日いて、木曽路を太田に出た。尾張国では、犬山に一日、名古屋に四日いて、東海道を宮に出て、佐屋を経て伊勢国に入り、桑名、四日市、津を廻り、松坂に三日いた。 一行が二日以上泊るのは、稀に一日の草臥・・・ 森鴎外 「護持院原の敵討」
・・・いずれにしても、高山とか高原とかでなくては見られないような美しい紅葉が、大都会の中で見られるのである。 紅葉は大体十一月一杯には散ってしまう。楓の樹が数十本もあると、その下に一、二寸に積もっているもみじの落葉を掃除するのはなかなかの骨折・・・ 和辻哲郎 「京の四季」
出典:青空文庫