・・・スバーの若い健やかな生命は、胸の中で高鳴りました。歓びと悲しさとが、彼女の身も心も、溢れるばかりに迫って来る。スバーは、際限のない自分の寂しささえ超えて恍惚として仕舞いました。彼女の心は、堪え難い程苦しく重い、而も、云うことは出来ないのです・・・ 著:タゴールラビンドラナート 訳:宮本百合子 「唖娘スバー」
・・・年来歌舞伎や講談やの因襲的教条によって確保されて来た立ち回りというものに対する一般観客の内部に自然に進行するところのリズムがまさしくスクリーンの上に躍動するために、それによって観客の心の波は共鳴しつつ高鳴りし、そうして彼らの腕の筋肉は自然に・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
出典:青空文庫