・・・支那の黄河や揚子江に似た、銀河の浪音ではなかったのです。しかし私は歌の事より、文字の事を話さなければなりません。人麻呂はあの歌を記すために、支那の文字を使いました。が、それは意味のためより、発音のための文字だったのです。舟と云う文字がはいっ・・・ 芥川竜之介 「神神の微笑」
・・・又禹の治水にしても、洪水は黄土の沈澱によりて起る黄河の特性にして、河畔住民の禍福に關すること極めて大なるもの也。よく之を治するは仁君ともいふを得べし。然るに『書經』は支那のあらゆる河川が堯の時以來氾濫し居たりしに、禹はその一代に之を治したり・・・ 白鳥庫吉 「『尚書』の高等批評」
・・・しかし、新聞記事の多数の読者には、どうしても、当人が登壇して滔々と論じたかのごとく、また黄河の水を大きなバケツか何かで、どんどん日本海へくみ込むかと思わせるようになっているのである。そのほうがなるほどたしかにおもしろいには相違ないのである。・・・ 寺田寅彦 「錯覚数題」
出典:青空文庫