出典:青空文庫
・・・もし嘘と思う人は日本に於けるアインシュタイン博士、或はその相対性原理の歓迎されたことを考えるが好い。あれは神秘主義の祭である。不可解なる荘厳の儀式である。何の為に熱狂したのかは「改造」社主の山本氏さえ知らない。 すると偉大なる神秘主義者・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
一 この間日本へ立寄ったバートランド・ラッセルが、「今世界中で一番えらい人間はアインシュタインとレニンだ」というような意味の事を誰かに話したそうである。この「えらい」というのがどういう意味のえらいのであるかが聞きたいのであったが・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
近頃パリに居る知人から、アレキサンダー・モスコフスキー著『アインシュタイン』という書物を送ってくれた。「停車場などで売っている俗書だが、退屈しのぎに……」と断ってよこしてくれたのである。 欧米における昨今のアインシュタ・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・つい、近ごろにアインシュタインが突然第二の扉を蹴開いてそこに玲瓏たる幾何学的宇宙の宮殿を発見した。しかし第一の扉を通過しないで第二の扉に達し得られたかどうかは疑問である。 この次の第三の扉はどこにあるだろう。これはわれわれには全然予想も・・・ 寺田寅彦 「案内者」
・・・換言すれば、アインシュタインとかボーアとか、ショーとか、シンクレア・リューウィスとか、あるいはマチスとか、ラヴェルとかあるいはまたそれほどでないとしたところでたとえば今度空中を飛んで来たリンドバークのような、そういう階級の頭脳をもった人たち・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・の読める人にとっては、アインシュタインの相対性原理の論文でも、ブロイーの波動力学の論文でも、それを読んで一種無上の美しさを感じる人があるのをとがめるわけにはゆかないであろうと思う。ただ事がらが非情の物質と、それに関する抽象的な概念の関係に属・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・今はもう皆故人となった佐野さん須藤さん大谷さんなどの諸先輩の快活で朗かな論争もその当時のコロキウムの花であった。アインシュタインの相対性原理の最初の論文を当時講師であった桑木さんが紹介され、それが種となって議論の花を咲かせたのもその頃の事で・・・ 寺田寅彦 「科学に志す人へ」
・・・と訳してあるが、これはアインシュタインの宇宙を指しているようで面白い。また「無有入於無間」を「個体性のないものは連続的物質中に侵入する」と訳しているが、これは、何となく古典物理学のエーテルを云っているようで面白い。「故致数車無車」を「部分の・・・ 寺田寅彦 「変った話」
・・・ アインシュタインが東京へ来た頃からわれわれ仲間の間でパイプが流行し出したような気がする。しかしパイプ道楽は自分のような不精者には不向きである。結局世話のかからない「朝日」が一番である。 煙草の一番うまいのはやはり仕事に手をとられて・・・ 寺田寅彦 「喫煙四十年」
・・・何事かと思って出てみると、国際電報によって昨年度と今年度のノーベル賞金の受賞者の名前の報知が届いた、その一人はアインシュタインで、もう一人はコーペンハーゲンのニールス・ボーアという人だそうだが、このボーアという人はいったいどんな人でどういう・・・ 寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」