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・・・の物語にしろ、スタンダールの「カストロの尼」にしろ。近代キリスト教は、その資本主義社会のモラルとして恋愛と結婚の純潔を主張した。家庭の純潔をもとめた。相手に対して貞潔であること――精神と肉体とが互の愛の調和のうちに統一されてあることを求めて・・・
宮本百合子
「貞操について」
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・・・スタンダールが書いている「カストロの尼」のおそろしい物語は、結局はローマ貴族の家門の悲劇であった。同じスタンダールの「パリアノ公爵夫人」という美しくもの凄いロマンスは十六世紀のイタリヤ法王領内で起った悲劇であった。これらの中世のおそろしい情・・・
宮本百合子
「人間の結婚」