出典:青空文庫
・・・マダム・キュリーがあれだけの仕事をしたのには、いくつかの原因があります。しかし、基本的に科学そのものが一定段階まで進歩していたこと、当時フランスで婦人の参政権は与えられていなかったけれども、大革命を経たフランスの理性的な人々の心には、婦人の・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
・・・ キュリー夫人伝は日本でも昨今ベスト・セラーズの一つであった。大抵の若い人たちは、あの本を愛読して感動した。年をとった人々でも、やはり尊敬をもって、この卓抜な一婦人科学者の堅忍と潔白とが成就せしめた業績を読みとったと思う。だが、キュリー・・・ 宮本百合子 「市民の生活と科学」
・・・ 国際的という表現は、どんな素朴な心にでも、それは自分の国の内ばかりでなく、よその国々の内においても、という内容で理解されている。キュリー夫人は、その意味で国際的な科学者であったし、日本にも音楽や映画女優で国際的なひろがりをもつひとの出・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・ 例えば、日本の若い婦人たちにも心からの興味と尊敬をもって読まれたキュリー夫人伝にしろ、もしキュリー夫人の一生が、ただ研究室での根気づよい努力でラジウムを発見したというだけであったら、その科学的業績に敬意は十分払われるとしても、あの・・・ 宮本百合子 「知性の開眼」
今わたしの机の上に二冊の本が置かれている。一冊は最近中央公論社から出版された窪川稲子の初めての長篇小説と云うべき「くれない」である。もう一冊は、これもごく近く白水社から出た「キュリー夫人伝」である。この二冊の本は、それぞれ・・・ 宮本百合子 「はるかな道」
・・・ 数学のソーニャ・コレフスカヤ、物理のキュリー夫人、経済のローザ・ルクセンブルクなどは科学の世界へ踏み出した稀有な婦人の天稟の典型であるが、婦人の思想家としてのエレン・ケイなどは、今日の歴史の鏡に映るものとして眺めた場合、現実の客観的な・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
・・・アメリカの反ファシスト同盟はついこの間フランスからキュリー夫人などをよんで会議した。自由市民同盟、人権擁護同盟その他の平和的組織がいくらかあって活動している。アメリカが総体的に戦争を欲しているといえば、それはアメリカ全人民への限りない侮辱で・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・ キュリー夫人やコルヴィッツは、ある時代の歴史の中で、特にきわだった個性である。然し、キュリー夫人の活動が可能となる様に、歴史の条件が備わって来る迄には長い人間業績の集積がなければならなかった。世界の物理学が原子の問題をとりあげ得る段階・・・ 宮本百合子 「まえがき(『真実に生きた女性たち』)」
・・・が出た明治三十二年といえば、西暦一八九九年、まさにキュリー夫妻が彼らの記念すべき物理学校の粗末な実験室で辛苦協力の成果としてラジウムを発見した翌年である。イプセンの「人形の家」が書かれたのは日本の明治十一年であった。そしてモウパッサンの「女・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
・・・たとえばキュリー夫人のラジウムにしろ、もし彼女とその卓抜な夫のピエールとがある発光体に最初の注意をひきつけられてゆかなかったとしたらば、彼女の不撓な根気強さもラジウムに到達することはなかった。 こうして考えてみると、現実を知っているとい・・・ 宮本百合子 「山の彼方は」