出典:青空文庫
・・・は、作者としてはダンテの神曲、地獄篇をひそかに脳裡に浮べて書かれたのかもしれないが、そこに地獄をも見据えて描き得る人間精神の踏んまえ、批判はなくて、作者そのものが、一箇の幽鬼であることを告白している。しかもそれは紙ばりの思想的凧に縛りつけら・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ 第三日 ダンテの像に黄色いきれで頬かぶりをさせたのと、百姓おやじに同じことをしたのと同じ位似合うのには一寸びっくりした。 可愛がらなければならないはずのものが可愛くなくって、可愛がらなくってもいいものが可愛・・・ 宮本百合子 「芽生」
・・・ 然し、自分の手で開いて見た扉の一重彼方は、私にとって、偉いダンテさえ当惑したような、紛糾の森林でした。 様々に描き、予想し、もう自己の内部を絶頂まで披瀝して当ったのですから、彼方此方で意外な齟齬に出会っても、自己を回収することすら容易・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
・・・文学でも『イリアス』が戦争の詩である事は言うまでもなく、ダンテの『神曲』は十字軍から百年戦争までの間の暗い時代にダンテ自身の戦争経験をも含めて造られ、ゲエテの『ファウスト』は仏国大革命の時代をその製作期として持っている。これらは戦争の刺激に・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
・・・吾人が真正の社会主義の理想に歩を進め、ダンテの楽園に到達すべき出発点である。世人がすべてこれに傾向する時 To thee be all man Hero の境地はますます明らかになるであろう。ソシアリティの本義も恐らくはここである。深山に俗・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」