出典:青空文庫
・・・ いわゆる、マルクス・ボーイ、エンゲルス・ガールという名ができたほど、当時は広汎に小市民層の若い男女がマルクシズムをうけ入れた時代であった。 それらの急進的な若い男女があふれるような活力と感受性とを傾けて、学内の活動などに吸収されて・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
マルクス=エンゲルス全集というと、赤茶色クロース表紙の書籍が、私たちの目にある。この本のために、これまでの日本の読者は、どんなに愛情を経験し、また苦労をなめてきただろう。階級のある社会に生活をいとなんでいる以上、そのなかで・・・ 宮本百合子 「生きている古典」
・・・そういう有名なマルクスの言葉がある。マルクスは、この詩人が言いそうな言葉を、賃労働の研究をした経済の本のなかに書いている。人間の一生は、それが一生として語られる本質から、時間の枠で押えられている。よしんばそれが八十年であるにしろ百年であるに・・・ 宮本百合子 「いのちの使われかた」
・・・ こういう特色をもった十九世紀初頭のライン州、トリエルの市にハインリッヒ・マルクスという上告裁判所付弁護士が住んでいた。そこに、一八一八年五月五日、一人の骨組のしっかりした男の子が産れ、カールと名付けられた。 マルクス家はユダヤ系で・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・もついに一八九〇年で惨酷な権威を失わなければならなくなっていた。マルクスの共産党宣言は一八四八年につくられていたし、ベーベルは「婦人論」を一八七九年に書いていた。ハウプトマンの「織匠」はドイツのシレジアにおいて、国家、資本家、地主と三重の重・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・十四回の講義で、「軍事問題におけるマルクス・レーニン主義の根本原理」「軍事の出版問題について」の説明をやる。六十二名の作家が動員された。 この講習の期間に作家聴講生は、二つの壁新聞を発行し、ほかに有益な軍事遊戯を思いついた。軍時に、ソヴ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・何故ならマルクスがバルザックの作品を評したなかで、バルザックが政治的には王党派であったにもかかわらず彼の文学におけるリアリズムの力は、どんな経済学の本よりも当時のフランスの社会相とプロレタリアートの未来を描破しているという意味の言葉を云って・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・これとは反対に『無産者新聞』や雑誌『マルクス主義』による市川正一、徳田球一その他の人々は、明治維新の未完成を強調した。日本の社会機構に根づよくのこっている半封建的要素と天皇制支配の非近代性を指摘した。 日本の特殊性について、大切なこの論・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・しかし、彼の出版者マルクスへやった手紙よりは、当然感傷的だ。訳者の思想や文法的知識以上に、彼女の感情がこの翻訳に大切な役割を持った。だから、心持に手綱のかかっている前半より、一九〇〇年八月、チェホフが楽々と「ヴイ」を「トゥイ」にかえてクニッ・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
・・・此の恐るべき文学の包括力が、マルクスをさえも一個の単なる素材となすのみならず、宇宙の廻転さえも、及び他の一切の摂理にまで交渉し得る能力を持っているとするならば、われわれの文学に対する共通の問題は、一体、いかなる所にあるのであろうか。それは、・・・ 横光利一 「新感覚派とコンミニズム文学」