出典:青空文庫
・・・ 次に堺氏が「ルソーとレーニン」および「労働者と知識階級」と題した二節の論旨を読むと、正直のところ、僕は自分の申し分が奇矯に過ぎていたのを感ずる。 しかしながら僕はもう一度自分自身の心持ちを考えてみたい。僕が即今あらん限りの物を抛っ・・・ 有島武郎 「片信」
・・・たとえばルソーの『懺悔録』あたりから、近代精神の何ものであるかを知って、更にわれ/\の時代に近いものを知るもいゝであろう。 如何に読むかという問いに対しては、余は広く浅く読むよりも、狭く深く読む方をすゝめたい。勿論広く読むことも必要であ・・・ 小川未明 「文章を作る人々の根本用意」
・・・ 一日ルソー歩してワンセンヌに赴く。偶ま中路暑に苦み樹下に憩い携うる所の一新聞紙を披いて之を閲するに、中に載する有りチシヨンの博士会一文題を発し賞を懸けて能く応ずる者あるを募る。其題に曰く学術技科の進闡せしをば人の心術風俗に於て益有・・・ 幸徳秋水 「文士としての兆民先生」
・・・ 洋画を通じてルソーやマチスや、ドランやマルケーなどのようなフランス絵の影響がこっそり日本画の方へ入り込んでいるのを発見する。日本の芸術がフランスを一と廻わりして後にもう一遍日本へ帰って来たのである。 洋画でも日本画でも人物の顔をな・・・ 寺田寅彦 「異質触媒作用」
・・・ゲーテのライネケフックスの訳本を読んで聞かせてくれたり、十歳未満の自分にミルの経済論、ルソーの民約論を教授してくれるという予告だけでもしてくれた楠さんは、たしかにその時代の新人であり、少なくも自分にとっては、来るべき「約束の国」の先触れをす・・・ 寺田寅彦 「重兵衛さんの一家」
・・・ゲーテだのルソーだの岡倉天心だのの伝記には、恋愛と同義語のような異性の間の友情が出て来てもいる。異性の間に漠然とした関心、興味、ある魅力が感じられているという状態のとき、それは互の条件次第で恋愛としてのびることも想像されると思う。けれども、・・・ 宮本百合子 「異性の間の友情」
・・・ 十八世紀になって、フランスではルソーのような近代的の唯物的な哲学を持った人達が現われて来た。働かねばならないという状態をもたらした産業革命は、この時代から本当に働いて、働くことだけで生きてゆかねばならない勤労大衆を産み出して今日に及ん・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」