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・・・また金持はとかくに金が余って気の毒な運命に囚えられてるものだから、六朝仏印度仏ぐらいでは済度されない故、夏殷周の頃の大古物、妲己の金盥に狐の毛が三本着いているのだの、伊尹の使った料理鍋、禹の穿いたカナカンジキだのというようなものを素敵に高く・・・
幸田露伴
「骨董」
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・・・耶蘇は表面姿を消しているが、しかし異学に姿を変じて活躍している、あたかも妖狐の化けた妲己のようである、というのである。その文章は実に陰惨なヒステリックな感じを与える。少しでも朱子学の埒の外に出て、自由に物を考える人は、耶蘇の姿を変じたものと・・・
和辻哲郎
「埋もれた日本」