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・・・「支那の哲人たちの後に来たのは、印度の王子悉達多です。――」 老人は言葉を続けながら、径ばたの薔薇の花をむしると、嬉しそうにその匂を嗅いだ。が、薔薇はむしられた跡にも、ちゃんとその花が残っていた。ただ老人の手にある花は色や形は同じに・・・
芥川竜之介
「神神の微笑」
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・・・ 仏陀 悉達多は王城を忍び出た後六年の間苦行した。六年の間苦行した所以は勿論王城の生活の豪奢を極めていた祟りであろう。その証拠にはナザレの大工の子は、四十日の断食しかしなかったようである。 又 悉達多・・・
芥川竜之介
「侏儒の言葉」