出典:青空文庫
・・・そして石川達三、石坂洋次郎、丹羽文雄、その他の作家や学者のある人は、全面講和でなければいけないと主張しています。 実際に世界の平和と日本の自立の為には、日本管理に関係のあるソヴェト同盟、中華人民共和国、その他オーストラリヤ、イギリスその・・・ 宮本百合子 「今年こそは」
・・・これこそ時代のモラルであるとし、高見順、石川達三、丹羽文雄の新進諸氏の作品は題も「嗚呼いやなことだ」「豺狼」等と銘し、室生犀星氏が悪党の世界へ想念と趣向の遠足を試みている小説等とともに、痛い歯の根を押して見るような痛痒さの病的な味を、読者に・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・の主人公にしろ、この間の丹羽文雄氏の作品「怒濤」にしろ、主人公はみんな年とっている。それもただの爺さんというのではなくて、一ひねりもふたひねりをもして人生に生き経た年よりで「怒濤」では、我から示す老いさらぼいを、表面はうっすりつめたい一つの・・・ 宮本百合子 「作品の主人公と心理の翳」
・・・ 八月号の『世界評論』丹羽文雄氏の小説「一時機」と、七、八月『時論』にのった山口一太郎元大尉の二・二六事件の真相「嵐はかくして起きた」「嵐のあとさき」をよみくらべた人はそこに不可解な一つの重複というか、複写版というか問題があることに気づ・・・ 宮本百合子 「作家は戦争挑発とたたかう」
・・・高見順と共に新人として登場した丹羽文雄の作品などもその世界に生きる人間群の現実的な生活のモティーヴだの動向だのという面からの観察は研ぎ込まれていず、人物の自然発生な方向と調子に従って、ひたすらその路一筋を辿りつめる肉体と精神の動きが跡づけら・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ 文学の世代的な性格に即して云えば、石川達三、丹羽文雄、高見順などという諸作家が新進として登場した当時、一時代前の新進は女に捨てられたり失恋したりして小説をかいて来ていたものだが、現代の新人は反対に女を足場にして登場した、ということが云・・・ 宮本百合子 「職業のふしぎ」
・・・前年度の回顧の中の第一の分類に属する丹羽文雄氏が「私は小説家である」といういせいのいい論文で、社会小説を主張して私小説から脱却しようとする今日の潮流に合していますが、一社会人として社会の進歩の歴史に対して責任を負わない客観主義に立つ社会小説・・・ 宮本百合子 「一九四七・八年の文壇」
・・・その同じ雑誌にどういう小説家が並んでいるかといえば、永井龍男その他丹羽文雄という工合です。今日の文学が評論界、思想界との間に相当のギャップを持っていることがはっきり見えているわけです。こういうふうにして既成作家のカムバックということにしても・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・ なぜ、いまのところ労働者は、そういう作品が書けないかということについて、東京重機の吉田文雄は、意味ふかい説明を与えている。吉田文雄の話は、こんにち自覚した組織労働者が、もう「太陽のない街」や「党生活者」の真似をしても、それでは生きた小・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・丹羽文雄、石川達三などは風俗小説をとなえて、戦後の混乱した現実を写してゆく文学を主張した。けれども肉体の解放によって封建性に反逆し、人間性を強調するというたてまえの肉体文学が、要するに両性の性に、人間性を還元した文学にとどまり、風俗小説がそ・・・ 宮本百合子 「婦人作家」