出典:青空文庫
・・・事変はいつまでも愚図愚図つづいて、蒋介石を相手にするのしないのと騒ぎ、結局どうにも形がつかず、こんどは敵は米英という事になり、日本の老若男女すべてが死ぬ覚悟を極めた。 実に悪い時代であった。その期間に、愛情の問題だの、信仰だの、芸術だの・・・ 太宰治 「十五年間」
・・・一九三一年の中国の日常風景は確に蒋介石のブルジョア革命の影響、列強植民地政策の行きづまりによって変っただろう。だが、吉行エイスケが中国の日常風景を作品に盛る場合、作者にとって主要な精髄は、銀座にあるとは種類の変った現代中国エロ・グロ風景だ。・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
・・・歴史小説の題材としての蒋介石の生涯は東洋史の新たな本質を語るものであり、彼の波瀾重畳に作用を及ぼす力は尾崎秀実氏の「南京政府論」が分析されている種類だけのものではないであろう。今日及び明日の作家には、文学の大道から、今日おびただしい犠牲を通・・・ 宮本百合子 「文芸時評」