出典:青空文庫
・・・その中にはミネルバの像や、ゲーテや、クロムウェルや、ナイティンゲール女史やの肖像があった。その少女じみた野心をその時の私は軽い皮肉の心で観ていたが、今から思うとただ笑い捨ててしまうことはどうしても出来ない。私がお前たちの母上の写真を撮ってや・・・ 有島武郎 「小さき者へ」
・・・フリードリッヒ大王や、ゲーテの事蹟は斯学の対象として、いつまでも研究をつづけていかれる。 社会主義の倫理観は一種の社会的幸福主義である。そして経済条件をその幸福の基礎とする点において、物的福利を重んずる。それが実質的、現実的、社会的であ・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・ダンテも、ゲーテも、ミケランジェロも、トルストイもそうであった。ストリンドベルヒのような女性嫌悪を装った人にもなおつつみ切れぬものは、女性へのこの種の徳の要請である。かようなものとして女性を求める心は、おしなべて第一流の人間の常則である。と・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・その詩や、ハイネ、ゲーテの訳詩に感心したのでもない。が、その編纂した泰西名詩訳集は私の若い頃何べんも繰りかえしてよんだ書物であった。 春月と同年の生れで春月より三年早く死んだ芥川龍之介は、、私くらいの年恰好の者には文学の上でも年齢の上で・・・ 黒島伝治 「短命長命」
・・・シェークスピアを尊敬してゲーテをそれほどに思わないらしい。ドストエフスキー、セルバンテス、ホーマー、ストリンドベルヒ、ゴットフリード・ケラー*、こんな名前が好きな方の側に、ゾラやイブセンなどが好かない方の側に挙げられている。この名簿も色々の・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・ この人のアインシュタインに対する関係は、一見ボスウェルのジョンソン、ないしエッカーマンのゲーテに対するようなものかもしれない。彼自身も後者の類例をある程度まで承認している。「琥珀の中の蝿」などと自分で云っているが、単なるボスウェリズム・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・しかしこのクルト・ワイルのジャズにはそれがみじんもなくて、ゲーテやバッハを生んだドイツ民族の情緒が濃厚ににじみだしている。そうしてそれでいて同時にまたどれにもどこかしら Gallow Song しかもやはりイギリスらしいそれの味がしみじみと・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・一方ではゲーテの「ライネケ・フックス」や、それから、そのころようやく紹介されはじめたグリムやアンデルセンのおとぎ話や、「アラビアン・ナイト」や「ロビンソン・クルーソー」などの物語を、あるいは当時の少年雑誌「少国民」や「日本の少年」の翻訳で読・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・明治十七、八年頃の片田舎の裁判所の書記生にしては実に驚くべきハイカラであったに相違ないのである。ゲーテのライネケフックスの訳本を読んで聞かせてくれたり、十歳未満の自分にミルの経済論、ルソーの民約論を教授してくれるという予告だけでもしてくれた・・・ 寺田寅彦 「重兵衛さんの一家」
・・・それからドレスデンやらエナへ行って後、ワイマールに二時間ばかりとどまって、ゲーテとシラーの家を見ました。ゲーテが死ぬ前に庭の土を取り寄せて皿へ入れて分析しようとしていたら、急に悪くなったのだそうで、書斎の窓の下の高い書架の上に土を入れた皿が・・・ 寺田寅彦 「先生への通信」