出典:青空文庫
・・・五 私はアルツィバーセフの作にあった一節、彼のピラトがシモンに向って、「おれはあのユダヤの乞食哲学者に対しては不思議な感じがした。そしてその云うことに対して何物をか感ぜぬわけには行かなかった。然し彼でないお前は一体何んであるか?・・・ 小川未明 「反キリスト教運動」
・・・そう私が言ったら、あの人は、薄くお笑いになり、「ペテロやシモンは漁人だ。美しい桃の畠も無い。ヤコブもヨハネも赤貧の漁人だ。あのひとたちには、そんな、一生を安楽に暮せるような土地が、どこにも無いのだ」と低く独りごとのように呟いて、また海辺を静・・・ 太宰治 「駈込み訴え」
・・・はコンスタン・ベネット、シモーヌ・シモン、ロレッタ・ヤング、ジャネット・ゲイナーという四女優を集めてこれらの女優の特色で興味をひこうとしたものであったろうが、案外に深みも味も、特長さえ大して活かされていなかった。 日本の映画では、以上の・・・ 宮本百合子 「映画の恋愛」
・・・知性の本質に対する解釈もおのずと変形させられて、活溌な、動的な、時には破綻を恐れず荒々しい力で新しい人生の局面をも開こうとする面はとかくうしろに置かれ、受け身な物わかりよさ、昔ながらの諦めをシモーヌ・シモンの髪かたちめいた現代の表情で表現す・・・ 宮本百合子 「知性の開眼」
・・・に関して、出版の何かの委員会がシモンされたと云われましたがその委員会のメンバーで、そのようなシモンはうけず、その委員会さえ確立していなかったと云われて居りました。七、わたしたちは、もし公安のために、風教のために「チャタレー夫人の恋人」の・・・ 宮本百合子 「「チャタレー夫人の恋人」の起訴につよく抗議する」
・・・彼は、サン・シモンの今日から見れば空想的な社会主義を勉強した急進的学生として、特にロシア民族の発達のために農奴制廃止を熱心に主張した一人であった。 一八四二年にゴーゴリが死んだ。その時、ツルゲーネフは極めて自然の感情の発露によってゴーゴ・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
・・・サン・シモンという名をきいても顔をこわばらせない人々が、会話の中に毛沢東とかスターリンという名が出ると、それが悪口でない限り、髪の毛をさかだてる権利があるように誤解しているのは何故だろうか。 次の事実がその理由を説明する。アメリカの人民・・・ 宮本百合子 「「人間関係方面の成果」」
・・・ ジャン・ジャック・ルソーを嘲弄し、サン・シモンをせせら笑う。何ものも信じない。幻滅を通った七月革命後のフランスの堕落とバルザック。こういう彼が現代において「秩序ある社会を希望する人々」としてカトリーヌをあげている。 そういう社会を・・・ 宮本百合子 「バルザックについてのノート」
・・・ シモーヌ・シモンがディアンヌという裏町の娘に扮し、ジェームス・スチュアートが道路掃除夫のチーコになっている「第七天国」という映画も、バーバラ・スタンウィックの出演しているもう一つのも、どっちも背景に欧州大戦時代をとりいれた作品であった・・・ 宮本百合子 「二人いるとき」