出典:青空文庫
・・・の中でもディケンズ研究は、最も重く評価されている。ディケンズの天才は、イギリスのみならず世界文学のほこりであるけれども、あれほどの彼の大天才もイギリス流の現実への妥協で終ったために遂に大成するに到れなかった、と云っている。そして、イギリスの・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・、家庭生活というものを重んじ、子供の躾けや教育に重きを置いてきた。その社会事情が反映して、十九世紀以後の英文学には「アリスの不思議な国旅行」「ピータア・パン」、ディケンズやアルコットの諸作など、世界の児童のために少なからぬ贈りものを与えてき・・・ 宮本百合子 「子供のために書く母たち」
・・・ ディケンズはクリスマス・カロールの中で、主人公をクリスマスの晩に転心させ、俄に慈悲の心にめざめさせた。それ故あの小説はそこで終らざるを得なかった。 バルザックは、クリスマス・カロールに向って鼻の頭に立て皺をよせるに止ったろう。バル・・・ 宮本百合子 「バルザックについてのノート」
・・・プーシュキン、ディケンズ、スコットなどの小説をゴーリキイはどんな熱中でもって読んだことであろう。彼は、本を読んでいるところを主人に見つかってひっぱたかれないように燈火を毛布でかくして読み、机の下にもぐり込んで読み、誰一人いない風呂場の月明り・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」