・・・今日の、日本の人民の一員たる現実の姿が、よかれあしかれ、そこに現出しているのである。 そういう日常の生活をしている官吏たちが、偶々一人の若い母親とその赤子の上にふりかかった災難をとりあげて警告的処罰をしようと思い立った理由は、どこにあり・・・ 宮本百合子 「石を投ぐるもの」
・・・また、過去のすべての文化的蓄積を最も革命的に利用し得るよう自身を鍛え洗われたものとし、世界観の隅々までをプロレタリアに組織するためには、先ず、文化啓蒙活動をとおしてあらゆる機会に勤労大衆と接触しその一員となることこそ、正しい第一歩であること・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・或る者は農村で、或る者は都会で、何か生産的な集団の中に目立たぬ一員として参加し、革命の歩みとともに毎日歩いたり働いたりしていた。十一年目に、はっきりめいめいの職場がわかれた。彼はもう専門的な作家で、昔の農村委員会時代の書記ではない。従って彼・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・いざという場合はソヴェト国家がその陣営に加えられた幼い一員に対して社会的連帯責任を負う。「子供の家」は最後の網となって経済能力の弱い母の手から脱落しようとする子を社会の成員として受けとめるのである。 女の中に予期された母性の経済的独立を・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・名が急には覚えられないので名刺のうらに書きつけた名札を籠の隅に貼り、良人の注意が主で、今日まで家族の一員となっているのである。 年が更った今いるのは、多く代がわりになった。 或るものは死に、或るものにはふいとしたことから逃げられ、新・・・ 宮本百合子 「小鳥」
・・・ドーデが、貧乏しながらこつこつと小説をかいていくらか出来た財力がレオンをそういう男に仕立ててフランスの敗れる一因をなす者として存在させることを、思っても見ただろうか。 今日の生活と文化は、こういう父と子の物語についても私たちに考えさせず・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・それは、作家自身の生活の大衆化であり、作家自身の大衆の一員としての生活感情の現実的な体得である。思うに、今日の現実生活のうちで、真に人間として、芸術家として自分の生き方を考え、求めている作家たちならば、自分たちの境遇がインテリゲンツィアとし・・・ 宮本百合子 「今日の文学に求められているヒューマニズム」
・・・ 元は小学校の先生であった本庄さんは、知りあった頃は作家同盟の一員で、その文学の団体がやがて解体する前後には、荒い波を身にうけていた一人であった。のち『人民文庫』の編輯に力をつくされた。「白い壁」という小説は好評を博した。『人民文庫・・・ 宮本百合子 「作家の死」
・・・社会の一員として有機的生活を営むと云う意識は、米国婦人に於て殊に強く認められると存じます。此点に於ても彼女等は、私共の持たない、或は持たなかった賢さを持って居るのでございます。 C先生。 私は此処までで大体米国婦人の優越点を肯定した・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ソヴェト作家は、ソヴェト人民国家の一員である以外にありようはない。この現実のうちに、かぎりない未来の達成と今日の未完成とがあり、文学の生粋なモティーヴがある。そこに作家が生きている社会は、過去のどんな社会の模倣でもないとき、作家がどうして、・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
出典:青空文庫