・・・「あっはは、ごうがいやさんみたいだ。」と、あかとらが わらいました。 みけは はずかしく なりました。「なんで こんな ものを、つけたのかなあ。」 みけは かんがえながら おうちへ かえると、ちょうど ねずみが、まどの ・・・ 小川未明 「みけの ごうがいやさん」
・・・しかしこれとても時と摂理のいやしの力が必ず働くものだ。いやされるということさえもかえって淋しいことなのだが、しかし一生ただ一回の失った恋の思い出だけに生きるということは、人間の浪曼性くらいではまずないことだ。 摂理は別の恋愛を恵むものだ・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・ローレンスは、生活の現実におそいかかって来る果しない矛盾、恐怖、解決の見出されない不安を、感覚の世界へ没入することでいやされ、人生との和睦を見出したのだった。その感覚的生存感の核心を性に見出したのだった。 ローレンスの勇気にかかわらず、・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・この場合、私たちの肉体が乱暴なつめこみにたいしてつねにいやさを感じるとおり、精神のラッシュにたいしてつよい不服を感じ抗議を抱いている。精神のラッシュにまぎれて、いかがわしい種々の操作が、今日では法律上の名目も失い、行政上の格式も失いながら、・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・生活に疲れた頭は決して、低声の雑談ではいやされません。 目のさめるような事がなければ息がつけません。 従って彼女等は、濃い色と、強い音調と香気と、強い興奮で、轟々と鳴りとどろく、大都会の騒音に辛くも反抗するのでございます。 其故・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・そして戦争からうけた傷をいやされて、新しい生活の出発をすることの出来た人が一人でも多いことこそ、私たちのよろこびです。 心から願うことは、もし幸いに愛とよぶにふさわしい心の状態で再婚が可能である方々は、どうぞ自分一人の解決ですべてが解決・・・ 宮本百合子 「未亡人への返事」
出典:青空文庫