・・・ 十一日 大学のかえりA林町により、歩き青山に戻る。石井に五十円やる。 十二日 さい弟を訪ね北千住に行く。 女、前の、夜番。 二十三日 みな安積から帰る。大宮から自動車で来、やけ跡も見ない故か、ふ・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・ 牛乳屋の小僧 この桑野村で始めて牧牛を始めた石井と云う牛乳屋の家に居る小僧なのだ。 七八つの子の体をして居るが年を聞けば十二だそうでいかにも小さいなりをして居るが中々可愛い児だ。 頭も顔もひとっくるめにまん・・・ 宮本百合子 「旅へ出て」
・・・ 午前中本箱や夜具、トランク類を、石井の荷物自動車にのせ、英男が面白がって後につかまって送って行った。大工、善さん、おまつ等がAに手伝い、略、片がついたと思う頃、自分は俥で出かけた。 始めて出来た自分等の家に行くのだけれども、母上に・・・ 宮本百合子 「小さき家の生活」
・・・「雨靴」石井ふじ子、「乳房」小林ひさえ、「蕗のとう」「あらし」山代巴、「遺族」「別離の賦」「娘の恋」竹本員子、「流れ」宮原栄、「死なない蛸」「朝鮮ヤキ」譲原昌子。その社会的基盤のひろさ、多様さにふさわしく、これらの婦人たちは人民の文学と・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
○温室の石井を呼びつける、 m 真中、右 石井、左 石井 草の工合をきいているが 妙にからんで「昨日よそへ行きましたら、カーネーションがのでんですっかりよく育って居りましたよ さし木をしてねエ、あれは温室でなくて・・・ 宮本百合子 「無題(九)」
・・・宝泉院は陣貝吹の山伏にて、筒井順慶の弟石井備後守吉村が子に候。介錯は入魂の山伏の由に候。 某はこれ等の事を見聞候につけ、いかにも羨ましく技癢に堪えず候えども、江戸詰御留守居の御用残りおり、他人には始末相成りがたく、空しく月日の立つに任せ・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書」
出典:青空文庫