・・・外国の絵入り雑誌などによくそれの三色写真などがある。そういう写真をよくよく見ていると、美しいには実に美しいが、何かしら一つ肝心なものが欠けているような気がする。それが欠けているためにこの美しい部屋が自分をいっこうに引きつけないばかりか、なん・・・ 寺田寅彦 「破片」
・・・但しそれは何も作家の学問的知識から生れたものでなくて、芸術家としての鋭利な直感によるのが普通ではあろうが、ともかくもそこに現われているものは立派な科学的事実でしかも吾人にとって新しいものである。そうでない場合には浅墓な三面記事と選むところは・・・ 寺田寅彦 「文学の中の科学的要素」
・・・ 政府の統制の下に組織された教育のプログラムがレビュー式であるくらいだから、民間の営利機関の手に成る大衆向けの教育機関であるところの雑誌や新聞のレビュー式ないしは汽車弁当式であることは当然である。たまたまレビュー式でない雑誌はあるが、そ・・・ 寺田寅彦 「マーカス・ショーとレビュー式教育」
・・・デカルトのかかる考といい、ライプニッツの予定調和といい、時代性とはいえ、鋭利なる頭脳に相応しからざることである。デカルトの如く我々の自己を独立の実体と考える時、神の存在との間に矛盾を起さざるを得ない。デカルトは「第三省察」において神の存在を・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・たいてい絵入りなり。この時また文法書を学ぶ。文法を知らざれば、書を読みて、その義理を解する事、能わず。我が言葉をもって我が意を達するに足らず。言葉、意を達するに足らざるものは、唖子に異ならず。第三、地理書 地球の運転、山野河・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・その愈々鋭利なるほど、愈々公明に我等はこれに答えんと欲する。これ大祭開式の辞、最後糟粕の部分である。祭司次長ウィリアム・タッピング祭司長ヘンリー・デビスに代ってこれを述べる。」 拍手は天幕もひるがえるばかり、この間デビスはただよろよろと・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・出版企業は、作家を原料加工業、読者を市場としてみるにすぎない。営利出版は、本質がそうである。将来にわたる文化の沃土として作家や読者大衆をみない。この条件は、作家をわる巧者にして、自分にとっても曖昧な「文学性」の上に外見高くとまりつつ稼ぎつづ・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・今日プロレタリア作家に課せられている任務は、あらゆる芸術的技術を統一し練磨し、階級性の集注的表現=プロレタリアートの組織の基本的線に従属させ、その独特で鋭利な武器となるべき時にあるからである。「樹のない村」で読者は直接農民委員会、または・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・佐橋甚五郎が小姓だったとき同じ小姓の蜂谷を殺害したそのいきさつも、その償として甲斐の甘利の寝首を掻いた前後のいきさつも、主人である家康の命には決してそむいていないのだが、やりかたに何とも云えぬ冷酷鋭利なところがあって、家康は手放しては使いた・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・ 雪のあるモスクワの辻々に大砲を指揮する法王の絵入りポスターが貼られた。 ソヴェト同盟を守れ! 同じポスターは、映画館の壁の上にある。 ソヴェト同盟を守れ! 銀行のベンチから見える赤いプラカートの上に。ワロフスキー通りの・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
出典:青空文庫