・・・を催し、そこの婦人記者となった長谷川寿子は、自身の略歴を前書にして「遂に過去の一切の共産思想という運動を清算し」大谷尊由に対談して、長谷川「歎異鈔なんか拝読いたしますと『善人なをもて往生をとぐ、いはんや悪人をや』と書いてありますから、吾々共・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・ 講釈師大谷内越山の訛 金色夜叉「昔の間貫一は死ですもうとる」 小酒井博士 ひどい肺病 妻君 かげで女中をしかりつけ、夫のところへ来ると、まるでわざとらしい微笑をはなさず。 夫 下・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・住吉の社頭で大矢数一昼夜に二万三千五百句を吐いた西鶴が、そのような早口俳諧をもってする風俗描写の練達から自然散文の世界に入って、浮世草子「好色一代男」などを書き始めた必然の過程は、人生と芸術への疑いにみたされていた桃青にどのような感想を与え・・・ 宮本百合子 「芭蕉について」
・・・が示しているいわゆる完成の本質とをくらべて見て、私は大谷崎という名で呼ばれる一人のすぐれた作家でさえ、文学の手法や傾向をとおして支配している日本の封建制の根強さに、新たな反省を呼びおこされたのであった。 ブルジョア・インテリゲンチアの作・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・の著作権を侵害せる事実明白なるにより、劇作家協会の後援を得て社長大谷氏を訴う。国民文芸会有志の熱心なる調停に動かされ、和解す。その際松竹より提出せし金円は著作権法改正運動に使用する条件を附して劇作家協会に寄附する。 一九二六年。劇作家協・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・自分が手に持っている道具も、真の鉅匠大家の手に渡れば、世界を動かす作品をも造り出すものだとは自覚している。自覚していながら、遊びの心持になっているのである。ガンベッタの兵が、あるとき突撃をし掛けて鋒が鈍った。ガンベッタが喇叭を吹けと云った。・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・ 目先の変更を必要としないほどに落ちついた大家は、自己の様式の内で何らか「新しい試み」をやる。主として画題選択の斬新であるが、時には珍しい形象の取り合わせ、あるいは人の意表にいづるごとき新しい図取りを試みる。しかしこれらの画家を動かして・・・ 和辻哲郎 「院展日本画所感」
出典:青空文庫