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・・・ 土蔵の奥には昔から、火伏せの稲荷が祀ってあると云う、白木の御宮がありました。祖母は帯の間から鍵を出して、その御宮の扉を開けましたが、今雪洞の光に透かして見ると、古びた錦の御戸帳の後に、端然と立っている御神体は、ほかでもない、この麻利耶・・・
芥川竜之介
「黒衣聖母」
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・・・「じゃ阿蘇の御宮まではどのくらいあるかい」「御宮までは三里でござりまっす」「山の上までは」「御宮から二里でござりますたい」「山の上はえらいだろうね」と碌さんが突然飛び出してくる。「ねえ」「御前登った事があるかい」・・・
夏目漱石
「二百十日」