・・・そうして、これらの問題はいずれも工学上のみならず気象学や海洋学上の重要な諸問題とかなり密接につながっていることはおそらく説明するまでもないことであろう。それにもかかわらず、これら眼前の問題に対していくらかでも知識を得たいと思ってライブラリー・・・ 寺田寅彦 「日常身辺の物理的諸問題」
・・・ このような理由から、日本の気候には大陸的な要素と海洋的な要素が複雑に交錯しており、また時間的にも、週期的季節的循環のほかに不規則で急激活発な交代が見られる。すなわち「天気」が多様でありその変化が頻繁である。 雨のふり方だけでも実に・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・そうだとするとこれらの河童捕獲の記事はある年のある月にある沿岸で海亀がとれた記録になり、場合によっては海洋学上の貴重な参考資料にならないとは限らない。 ついでながらインドへんの国語で海亀を「カチファ」という。「カッパ」と似て・・・ 寺田寅彦 「化け物の進化」
・・・天文、気象、地質、海洋等に関する自然科学研究に物理学応用の発達して行くのはむしろ当然の事であろうが、普通の意味における物質とはよほど縁の遠い生理学や心理学にまでもだんだん応用が開けて行くようである。 工業における応用も事新しく述べるまで・・・ 寺田寅彦 「物理学の応用について」
・・・アドルフ・シュミットの「海洋学」「地球のエネルギーハウスハルト」「地球物理輪講」キービッツの「空中電気」ワールブルヒの「理論物理学特別講義」ペンクの「地理学輪講」という御膳立にきめた。 ヘルマンの講義はシンケル・プラッツの気象台へ聴きに・・・ 寺田寅彦 「ベルリン大学(1909-1910)」
・・・一つはそのころひどく胃が悪くて絶えず痛んでいたという事が日記の中にも至るところに見いだされ、またいつであったか一度は潰瘍の出血らしいものがあったという話を聞いているから、この病気のためもあったに相違ない。実際その前から胃弱のためにやせこけて・・・ 寺田寅彦 「亮の追憶」
・・・一人は胃癌であった、残る一人は胃潰瘍であった。みんな長くは持たない人ばかりだそうですと看護婦は彼らの運命を一纏めに予言した。 自分は縁側に置いたベゴニアの小さな花を見暮らした。実は菊を買うはずのところを、植木屋が十六貫だと云うので、五貫・・・ 夏目漱石 「変な音」
・・・そのときあちこちの氷山に、大循環到着者はこの附近に於て数日間休養すべし、帰路は各人の任意なるも障碍は来路に倍するを以て充分の覚悟を要す。海洋は摩擦少きも却って速度は大ならず。最も愚鈍なるもの最も賢きものなり、という白い杭が立っている。これよ・・・ 宮沢賢治 「風野又三郎」
・・・彼は殆どこれまで唯一のソヴェト海洋作家である。婦人の作家――もとは小学校の女教師で党員作家であるアンナ・カラヴァーエヴァも出かけた。 彼等は、赤軍兵が張ってくれた後方のテントの中で、手帳をひねくりまわしてはいなかった。突撃に加わり、一緒・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ かように文学として自主的な必然に立っていなかった農民文学のグループが、本来ならばますます描かれるべき農村状態の緊張の高まりと共に忽ち方向を転換して次の年には南洋進出の潮先に乗って海洋文学懇話会というものに変ったのは、まことに滑稽な悲惨・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
出典:青空文庫