・・・一、前条の外に、化学、天文学等、種々の科目あれども、窮理学の中に属するものなれば別に掲げず。一、学問の順序は、必ずしもこの一科を終りて次に移るにあらず、二科も三科も同時に学ぶべし。一、漢字を知らざれば、原書を訳するにも訳書をよむ・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・この際や読書訳文の法、ようやく開け、諸家翻訳の書、陸続、世に出ずるといえども、おおむね和蘭の医籍に止まりて、かたわらその窮理、天文、地理、化学等の数科に及ぶのみ。ゆえに当時、この学を称して蘭学といえり。 けだしこの時といえども、通商の国・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾の記」
・・・たとえば、天文、地理、究理、化学等は技芸なり。孝悌忠信は道徳なり。究理化学を学び得るも、孝悌忠信の道を知らざれば、世の風俗は次第に悪しくなるべしとて、もっぱら儒者の教を主張して、あるいは小学校の読本に、『論語』、『大学』等の如き経書を用いん・・・ 福沢諭吉 「小学教育の事」
・・・というのは、当時の語学校はロシアの中学校同様の課目で、物理、化学、数学などの普通学を露語で教える傍ら、修辞学や露文学史などもやる。所が、この文学史の教授が露国の代表的作家の代表的作物を読まねばならぬような組織であったからである。 する中・・・ 二葉亭四迷 「予が半生の懺悔」
・・・と云う考えだから、私の主義は思想の為の思想でもなけりゃ芸術の為の芸術でもなく、また科学の為の科学でもない。人生の為の思想、人生の為の芸術、将た人生の為の科学なのだ。 人生、々々というが、人生た一体何だ。一個の想念じゃないか。今の文学者連・・・ 二葉亭四迷 「私は懐疑派だ」
・・・新言語を用い新趣向を求めたる彼の卓見は歌学史上特筆して後に伝えざるべからず。彼は歌人として実朝以後ただ一人なり。真淵、景樹、諸平、文雄輩に比すれば彼は鶏群の孤鶴なり。歌人として彼を賞賛するに千言万語を費すとも過賛にはあらざるべし。しかれども・・・ 正岡子規 「曙覧の歌」
・・・あなたはどこかの化学大学校を出た方ですね。」「いいえ、私はエステル工学校の卒業生です。」「エステル工学校。ハッハッハ。素敵だ。さあどうです。一杯やりましょう。チュウリップの光の酒。さあ飲みませんか。」「いや、やりましょう。よう、・・・ 宮沢賢治 「チュウリップの幻術」
・・・「午后は第一学年は修身と護身、第二学年は狩猟術、第三学年は食品化学と、こうなっていますがいずれもご参観になりますか。」「さあみんな拝見いたしたいです。たいへん面白そうです。今朝からあがらなかったのが本当に残念です。」「いや、いず・・・ 宮沢賢治 「茨海小学校」
・・・ならば必ず生れたばかりの嬰児も代議士を志願してフロックコートを着て政見を発表したり燕尾服を着て交際したりしなければいけない、又小学校の一年生にエービースィーを教えるなら大学校でもなぜ文学より見たる理論化学とか、相対性学説の難点とかそんなこと・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・というわけはその晩方、化学を習った一年生の、生徒が、自分の前に来ていかにも不思議そうにして、豚のからだを眺めて居た。豚の方でも時々は、あの小さなそら豆形の怒ったような眼をあげて、そちらをちらちら見ていたのだ。その生徒が云った。「ずいぶん・・・ 宮沢賢治 「フランドン農学校の豚」
出典:青空文庫