・・・灯の下に集められた一つ一つの顔、大きいその肩、がんじょうなその手を、画家は、情景の核心にふれて、内部から描いている。明暗の技術も大胆で巧妙で、ケーテのリアリストとしての技術の高い峯が示されているのである。 興味あることは、この「織匠」に・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・ 結婚の核心にあるそういうものを明確に見ようとしないで、結果の方からいわれるとすれば、その単純さでやはり観念的だと思うのだが、若い女性が割合あやしまずにそういう観念化された傾きにひき入れられて行くようなのはどうしてだろう。 この問い・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
・・・何故ならソヴェト生産拡張五ヵ年計画の核心は、都会では重工業生産の増大であり、農村では農業の社会主義化以外にない。ソヴェト同盟の人口の過半数は農民によって占められている。農業における社会主義生産が高められ工業との階級的結合が行われなければ、全・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・と云われたことは、社会主義リアリズムへ展開して、もとよりその核心に立つ労働者階級の文学の主導性を意味しているのであるが、前衛の眼の多角性と高度な視力は、英雄的ならざる現実、その矛盾、葛藤の底へまで浸透して、そこに歴史がすすみ人間性がより花開・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・ マークが、スーザンのその心持の核心をついに掴めなかったということは何という悲劇であったろう。自分が彼女にとってなくてはならないものであって、同時に彼女は彼というものだけで満足しきれないものをも持って生きているのだということを、マークは・・・ 宮本百合子 「『この心の誇り』」
・・・あれは未だ纏った考えと云うより、一つの暗示にすぎないから、女性中心思想によって敷衍された結論に猶考える余地があるとしても、その核心である女性のデリケートな自尊心については味うべきものであると思う。所謂進歩し、懐疑なく性生活を支配している新女・・・ 宮本百合子 「是は現実的な感想」
・・・常に事物の本質をわかって行きたいと思う心持こそ、文化の核心の精髄であるとともに、人間の人間たる所以であると思う。 私たちが謙遜な心で今日の生活の諸相を省みたとき、文化の問題が最大の危険としてもっているものは何だろう。 いろいろの点が・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・現実生活の中では、文部省の教科書取締りにあらわれた、文学の読みかたの、特殊な標準とも関連しているから、各種目の長篇小説の未曾有の氾濫状態の一面に、おのずと、文学とは何であろうかという、文学にとって最も核心にふれた反省が、一般の人の心のうちに・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
・・・果して、文学の仕事に従うような核心的なものが自身の精神のうちにあるかどうかについて、若々しく憂悶する美しさもあっていいのではなかろうか。『文芸』の当選作「運・不運」を読み、選評速記を熟読して、深くその感に打たれた。 ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・と日本語に表現して身につけて来た生活と思想との核心的ポーズは、そのまま「行動主義」のニイチェ的なるものとしてあらわされている。更にフェルナンデスは、左右両翼のいずれへ作家が思想的立場を決定することも、歴史と思想の現状になんら照応しない観念、・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
出典:青空文庫