・・・ 時間の上からは第一篇についで書かれた第二篇は、それらの諸問題と必然なつながりをもっていると云うばかりでなく、この評論集全巻の核心をなす重要な部分ではあるまいかと考える。日本の文芸批評は、十年ほど前に鑑賞批評、印象批評から発展して、漸々・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
・・・都会の工業生産と断然結合すべき、社会主義的生産に欠くべからざる工業原料生産の核心なのだ。 拍手! 熱心な拍手。もう聴衆は一人も笑っていない。 日本女は心に一種のおどろきを感じつつあたりの顔々を眺めまわした。どうだ、この気の揃いようは・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・それゆえ、一九三八年ごろフランスでナチスの暴虐にたいして人間の理性をまもるために組織されたヒューマニスティックな人民戦線のたたかいも、日本に紹介される時には、大事な闘争の社会史的な核心をぬいて伝えられた。日本の天皇制は、帝国主義の段階にあっ・・・ 宮本百合子 「自我の足かせ」
・・・だが、実際の問題、行為の問題として見たとき、このヒューマニズムの核心的翹望である知性と感性、意識と行動との人間的統一は、こんにちの錯雑している実況の中からどういう方法によって実現され得るであろうかという質問が生じるのである。文学として社会的・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・況んや、私たちの生存を貫く建設能力、人間らしく生きる才能の核心であり、その推進の力であり得るだろうか。俗悪出版企業者は、現代の心理の一面を、誇張し、煽情し、刺戟して、一銭でもより多く投じさせようとする。営利映画会社では、より濃厚な情痴の場面・・・ 宮本百合子 「商売は道によってかしこし」
・・・このようにして評論家としての小林秀雄は、対象の本質の核心に迫ってそれを明らかにし得ないまま、対象の感性的な印象の周辺をかけめぐることとなった。その果のない駈けめぐりの姿を精緻ならしめ、豊かならしめようとして、表現の逆説的な手法を己れの特色と・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・その重大事態の核心をなすものは何かといえば、食糧の非常手段による調達であろう。住民の非常手段による調達というとき、この間まで日本人の頭に浮ぶのは、往年の米騒動ばかりであった。しかし、今日では、人民の食糧管理という観念が加って来ており、そこに・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
・・・そして、大衆的懇談会で革新有志二十人をつくる。国鉄。 一般に官業だから政府のつぶれぬうちは従業員の生活は保証されていると考えている。十五ヵ年間以上つとめると一時金なら二千円以上 年金なら一時千円で以下毎年金が下りるので、お・・・ 宮本百合子 「大衆闘争についてのノート」
・・・という歌壇革新の歌論を日本新聞に発表したのは明治三十一年であった。当時十九歳ばかりであった長塚節はこの論文にいよいよ動かされた。そして、三十年には子規の門に入り、主として和歌、俳句、写生文を学び、子規が没し『アララギ』が出るようになってから・・・ 宮本百合子 「「土」と当時の写実文学」
・・・ 裡に絶え間ない不安、焦燥、生活の革新を抱いている者は、或る時は終に爆発する。それが、その時の周囲の状況、社会輿論の暗示によって、種々異った形式を採るのは争われない事実なのである。 故に、我々は、その重大な一点に、絶えず聰明な、透徹・・・ 宮本百合子 「深く静に各自の路を見出せ」
出典:青空文庫