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・・・細い目のちょいと下がった目尻に、嘲笑的な微笑を湛えて、幅広く広げた口を囲むように、左右の頬に大きい括弧に似た、深い皺を寄せている。 綾小路はまだ饒舌る。「そんなに僕の顔ばかし見給うな。心中大いに僕を軽侮しているのだろう。好いじゃないか。・・・
森鴎外
「かのように」
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・・・ 王族広間の上のはてに往き着きたまいて、国々の公使、またはその夫人などこれを囲むとき、かねて高廊の上に控えたる狙撃連隊の楽人がひと声鳴らす鼓とともに「ポロネエズ」という舞はじまりぬ。こはただおのおの右手にあいての婦人の指をつまみて、この・・・
森鴎外
「文づかい」