・・・その心掛けは嘉みすべしといえども、人々に天賦の長短もあり、家産・家族の有様もあり、幾千万の人物が決して政治家たるべきにも非ず、また大学者たるべきにも非ず。世界古今の歴史を見ても、その事実を証すべきなれば、政治も学問も、その専業に非ざるより以・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・第九、法律書 人の生命・家産を重んじ、正をすすめ邪をとどむるの法を論じたるものなり。法律に暗き人は、知らずして罪を犯し、知らずして法にしたがうことあり。あたかもその生命・家産を偶然に保つ者というべし。一、右の条々は、・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・本来無き家産を新たに起すは、もとより難しといえども、すでに有る家産を守るもまた、はなはだ易からずして、その難易はいずれとも明言し難きほどのものなれば、貧富ともに勉むべきは学問にして、ただその教場をして仙境ならしめざること、吾々のつねに注意し・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾学生諸氏に告ぐ」
・・・ソヴェト同盟の勤労者が各人一ヵ月を楽しく過す夏の費用は、国家計画部が、ちゃんと一年間の労働保護費へ加算して、各企業の予算へふり当ててあるのだ。〔一九三一年九年〕 宮本百合子 「ソヴェト労働者の夏休み」
・・・祖父の死後秋三の父は莫大な家産を蕩尽して出奔した。それに引き換え、勘次の父は村会を圧する程隆盛になって来た。そこで勘次の父は秋三の家が没落して他人手に渡ろうとした時、復讐と恩酬とを籠めたあらゆる意味において、「今だ!」と思った。そして、妻が・・・ 横光利一 「南北」
出典:青空文庫